🧱 今朝ニュースで見て、その日のうちに触った
今朝のテックニュースで nexu-io/html-anything が GitHub Trending に上がっているのを見つけて、休みの日だったんですが、その場で手元に落として動かしました。
html-anything(=ローカルで動く「AI エージェント用 HTML エディタ」。Markdown を渡すと最終形の HTML 1 枚を組んでくれる)を触った第一印象は、正直に言うと——「驚きはなかった」でした。
良くできています。でも「来たか」であって「すごい」ではなかった。今日はその理由を、ツール紹介ではなく、Web 畑で長くやってきた人間の視点 から書きます。AI でデザインを作る話に興味がある人ほど、たぶん刺さります。
🔮 「自明だった」話 — Markdown を吐ける時点で HTML は確定していた
私はもともと Web、というか Web デザインの経緯がある人間です。だから LLM が出てきた最初の段階 で、もうこの結論は見えていました。
LLM が Markdown を生成できる。その時点で、いずれ HTML も全部生成できるようになるのは確定していた。
理屈は単純です。
- Markdown → HTML 変換(=
#を<h1>に、-を<li>に変える処理)は、LLM が来るずっと前から存在する枯れた技術です - その変換自体を LLM がやれるなら、間に挟まっていた Markdown という「中間形態」を飛ばして、最初から HTML を書ける ようになるのは時間の問題でした
- さらに言えば、既存の Web デザインは、中身を知っている人間にとっては元から"持っている"ものです。Apple のあのレイアウトも、洗練された SaaS の LP(=ランディングページ、商品紹介の 1 枚物)も、構造を分解できる人間にはコピー可能な状態だった。LLM がそれを学習データとして持っているなら、再現できて当たり前なんです
気づいていた人はたくさんいると思います。私だけの慧眼みたいな話ではない。Web 畑の人間なら見えていた地平線 です。
だから本当の意味で意外だったのは、技術そのものではなく——
🐢 意外だったのは「遅さ」だった
「思ったより時間がかかったな」
これが正直な印象でした。HTML を吐くだけなら、もっと早く来てよかったはずなんです。なぜ遅れたのか。手元で長く観察してきて、私はこう見ています。
🎨 最後まで残ったのは「アニメーションと細かい UI/UX」
静的な HTML の構造と CSS は、わりと早い段階で LLM が書けるようになりました。詰まったのはその先 です。
- ✨ アニメーション(=スクロールで要素がふわっと出る、hover で動く、といった動きの演出)
- 🖐️ 細かい UI/UX(=押し心地、間の取り方、視線の誘導といった、見ただけでは言語化しづらい質感)
このあたりは、コードを吐くだけでは到達できない。「出来上がった画面を見て、ズレに気づいて、自分で直す」という能力が要るからです。
🧠 私の仮説:コード生成と画像認識で、進化スピードが違った
ここが今日いちばん言いたい部分です。LLM の中で、コードを生成する能力 と、画像を認識して自己修正する能力 は、進化のスピードが揃っていなかった——というのが私の見立てです。
- コード生成は早かった。だから「それっぽい HTML」はわりと前から出せた
- でも「生成した画面のスクショを見て、デザインのおかしさに気づいて、自分で直す」という、画像認識ベースの自己修正ループは、コード生成より遅れて進化した
デザインの仕上げ——特にアニメーションや余白の質——は、作る能力(コード)ではなく、見て気づいて直す能力(画像認識)に依存 します。そこのスピード差が、HTML 自動生成の「最後の 1 割」を長く塞いでいた。それがようやく揃った。これが本当のニュース なんだと思います。「AI で HTML が作れる」自体は、もう答えが出ていた問題でした。
🏢 3 階建ての品定め — Claude Design / Open Design / html-anything
この文脈で、今ある選択肢を 3 つ並べると、きれいに「降りてくる」流れが見えます。
| 段 | 名前 | 何者か |
|---|---|---|
| 1 | Claude Design | Anthropic 公式。cloud 限定(claude.ai 上でしか動かない)のデザイン生成機能 |
| 2 | Open Design | nexu-io/open-design。OSS、4 万★超。AI にデザイン HTML を書かせる本体。同じチームの本丸 |
| 3 | html-anything | nexu-io/html-anything。2 と同じチームの新作。用途を「HTML エディタ」に絞った軽量版。今朝のニュースのやつ |
1️⃣ Claude Design — 大手 LLM 企業の第一弾、しかし割に合わない
大きな LLM 企業が出した、この種のものとしては最初の一手が Claude Design だと思います。が、実際に使ってみての正直な感想は厳しいです。
- 🎯 精度が、割の良さに見合わない
- 🔥 トークン(=AI が処理する文字の単位、使うほど枠を消費する)を馬鹿食いする
- ⏳ 使用量の枠が決まっているので、こんなものは一瞬で溶ける
手元で HTML を作れるのに、なぜわざわざクラウドの有限な枠を溶かしてまでそこでやるのか。 この問いに答えられないんです。だから——
2️⃣ Open Design — 「クラウドでやる理由がない」への回答。ただし過剰
その不満への回答として、Open Design が出てきたのはよく分かります。自分の手元の、ログイン済みのコーディングエージェント(=Claude Code や Cursor など)のセッションをそのまま使い、API キーすら不要 で、ローカルでデザイン HTML を生成する。クラウドの枠を溶かさない。理にかなっています。
ただ、実際に見てみると——ちょっと過剰なんですよね。 重いし、だるい。HTML を作るだけなのに、あの規模の仕組みは要らないはず なんです。4 万★が示すように、本体としては立派に育っている。でも「育ちすぎ」とも言える。やりたいことの本質に対して、装備が多すぎる。
3️⃣ html-anything — 過剰を削いだ「適正サイズ」として来た
そして今朝、3 番目が来た。同じチームが、Open Design の過剰を削ぎ落として「HTML エディタ」に用途を絞った軽量版 が html-anything です。
実際に触ると、思想は正しい。Markdown を貼って ⌘+Enter、ローカルの Claude Code セッションが走って、サンドボックス(=隔離された安全な領域)の中に HTML が組み上がる。API キー不要。「本質は HTML を 1 枚作ること」に降りてきている。「Claude Design が割に合わない → だから Open Design → でも過剰 → だから html-anything」。この 降りてくる流れ そのものが、この分野の答えが収束しつつあることを示しています。
🪞 自分にも刺さる — 「自分はもう手元で同じことをやっている」
ここで正直に書きます。html-anything は良くできている。でも"私にとっての"価値は、実は薄い。
なぜなら、ほとんど同じことを、私はもう手元で前からやっているから です。冒頭に書いた通り、これは自明だった。気づいた人間は、ツールを待たずに自分で手を動かしてきました。私もその一人です。
だから今朝の出来事は、私にとっては新発見ではなく——答え合わせ でした。これは「ツールが優れている/劣っている」という話ではありません。意味はこうです。
早くから気づいて手を動かしてきた手法が、ついにプロダクトとして一般化した。html-anything は、その"到達点のマーカー"である。
優れたツールの登場として読むより、「この手法が普及した日付」として読むほうが正確 だと思っています。
⚠️ 「Built with AI, not by AI」— 事実だけは人が見ておく、くらいの話
以前の記事 で、Robin Moffatt 氏の 「Built with AI, not by AI」(=AI で作るのと、AI に作らせるのは違う。判断と文体は人間が持つ)という線引きを紹介しました。今日、それを軽く思い出す場面がありました。
html-anything に、この記事の前段にあたる原稿を一度組ませてみたら、出力 HTML にこんな"勝手な創作"が混じっていました。
- 👤 著者名が別人になっていた — 私の名前は高村裕貴ですが、出力には実在しない「髙村 大樹」という署名が入っていた
- 🔗 リンクが開発サーバーのアドレスのままだった — CTA(=行動を促すボタン)が
http://localhost:3000/services。そのまま公開したら死にリンク
これは 1 回試しただけなので、毎回こうなるとは限りません。ただのハルシネーション(=AI がそれっぽい嘘で隙間を埋めてしまう現象)で、珍しくもない話です。
言いたいのは「AI はダメだ」ではありません。デザインは任せても、署名・リンクみたいな"事実"のところだけは、人間が一度見ておいたほうがいいよね——くらいのことです。仕上がりは見事でした。そのうえで事実だけ確認する。特別な身構えは要りません✍️
🧬 メタな実演 — この記事自体を html-anything で組むと
せっかくなので、今あなたが読んでいるこの記事そのものを、html-anything で組んだもの を置いておきます。しかも ダーク版とライト版の 2 枚。
このブログ自体は、お使いの端末の OS 設定(ダーク/ライト)に追従して表示が変わります。そのうえで、同じ原稿を html-anything に通すと、雑誌レイアウトの別物が——しかも明暗 2 通りで——出てくる。同じ中身が、レンダラー次第でここまで変わる。この記事の主題そのものを、リンクで体験できるようにしました。
(注:2 枚とも、上に書いた「著者名・リンクの取り違え」を人間が直したうえで配置しています。AI が組み、人間が事実を保証した、という状態です)
🎯 まとめ — 答えはとっくに出ていた、来たのは「普及」のほう
| ❌ こう読むと外す | ✅ こう読むと正確 |
|---|---|
| AI で HTML が作れる、すごい新時代だ | Markdown を吐ける時点で確定済み。新しくはない |
| ついに技術的ブレイクスルーが起きた | ブレイクスルーは「画像認識の自己修正」が追いついた点。それ以外は既定路線 |
| 最強のツールが出た、乗り換えよう | ツールの優劣ではなく「手法が一般化した到達点」のマーカー |
| AI に任せれば記事もデザインも完成 | デザインは AI に任せて OK。署名・リンクみたいな事実だけ人が一度見る |
LLM が出た最初の日から、HTML は確定していました。意外だったのは遅さで、その遅さの正体は「見て気づいて直す力」の遅れだった。それがようやく揃い、Claude Design → Open Design → html-anything と 適正サイズまで降りてきた。
そして、早くから気づいて手を動かしてきた人間にとって、これは新発見ではなく 答え合わせ です。
それでも、答え合わせには価値がある。「自分の見立ては合っていた」と確認できることは、次の地平線を読む自信になる。